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執筆者の写真Philip Sugai

社会価値研究センターが新しい価値のモデルを発表

更新日:2022年3月24日

世界的には、短期的な利益重視の考え方から、長期的で持続可能な価値重視の考え方への転換が進んでいます。このため、世界中の企業は、「私たちの集団としての将来に対してどのような価値を提供していますか?」という基本的な問いに答えていく必要があります。

社会価値研究センター(VRC) は、モデルを提供することで企業の規模、業界、地域を問わず企業がこの問いに答え、その中で持続可能な未来を実現していく過程を支援することを目的に、2021年11月に設立されました。VRCは4つの手順に焦点を当てており、 (1) 25以上のESGおよびサステナビリティに関する枠組みを統合した「価値のモデル」の開発と検証、 (2) 「価値のモデル」と現在のESGおよびサステナビリティに関する報告慣習を超えた金融および投資の慣習との紐づけ、 (3) 分散データと人工知能を使用した受動的データ報告書の作成、 (4) 世界中の他の研究者や実践者との連携と議論を促進するための教育、トレーニング、アウトリーチプログラムの作成に取り組んでいます。


最初のステップとして、社会価値研究センターは2021年6月に「価値の評価」と題した最初のホワイトペーパーを発表しました。このホワイトペーパーでは、15の世界の主要なESGおよびサステナビリティに関する枠組みから357の影響力の測定を統合しており、企業が主要なステークホルダーに及ぼす価値の影響を客観的かつ透過的に測定および管理できるようにするための初期モデルの概要を説明しています。


本日発表された2版目のホワイトペーパー 「責任あるビジネスのための価値モデル」では、6つの新たな枠組みから346の影響力の測定値を抽出し、初期の「価値の評価」におけるモデルに統合しています。このモデルには、新たに提唱された国際サステナビリティ基準審議会 (ISSB) の気候関連情報開示プロトタイプ、気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD) の指標、目標、トランジション計画に関するガイダンス、ストックホルム・レジリエンス・センターのプラネタリー・バウンダリー、UNDPの企業・事業体向けSDGインパクト基準、国際金融公社 (IFC) のパフォーマンス・スタンダード、Science Based Targetsの気候変動開示が含まれています。


社会価値研究センター長の須貝フィリップ教授は、「責任あるビジネスの取り組みを、ステークホルダーへの影響を測定・管理するための目標ベースかつ客観的で透明性のあるアプローチに集中させるために、私たちのチームは何百もの既存の影響力の測定を調査し、これらを27の共通テーマに整理し、規模や業界、地域にかかわらず、あらゆる企業がステークホルダーに生み出す価値を常に高めるために測定、管理、活用できる81の目標を設定いたしました」と述べています。


他のESGおよびサステナビリティに関する報告の枠組みと異なり、社会価値研究センターの価値のモデルはステークホルダーに対する実際の影響を調査し、それをもとに、ステークホルダーとともにより価値を生み出すための前向きな戦略策定に役立てることができます。 「私たちの調査したESGおよびサステナビリティ報告の枠組みの多くは、企業が影響に関する報告を行うという重要な第一歩を促進することに重点を置いています。」と須貝教授は述べます。「しかし、報告は最初の一歩に過ぎません。 ステークホルダーに対する実際の影響を調査することが重要な理由は、単に報告するだけでなく、この情報を使って可能な限り高いレベルの社会的影響を生み出すことにあるのです」。


社会価値研究センターでは、現在企業のパフォーマンスの向上とそれに伴う社会的影響の改善を目指しています。アクィナス大学(ミシガン州グランド・ラピッズ)経済学名誉教授であり、社会価値研究センター運営協議会員の山崎正人教授は、 「社会価値研究センターの研究チームによる価値のモデルは、企業が直面する問題の根本的な原因を優れた評価ツールを用いて自動的に特定できるため、現在存在する他のどのサステナビリティに関するモデルや取り組みよりも高度なアプローチを提供しています」 と述べています。


「今日のサステナビリティへの取り組みに必要なのは、単なる報告だけではありません」 と社会価値研究センター運営協議会員であり、価値の創造に関する指導者でもあるクマール・アイヤー博士は述べます。「ESGの進歩は、主に”悪いことを少なくする”ことであり、基準や評価は、悪いことが少なくした者の中で最も優れている者を明らかにするだけなのです。しかし、多様な枠組みにおいてはブラックボックスといえるアプローチが多すぎるため、それさえもランダムになってしまいます。さらには、サステナビリティに関しては全く考慮されていないとも言えます。社会価値研究センターの価値のモデルは、単独評価が可能な客観的かつ定量化可能な指標に基づいています。価値のモデルは、社会的影響の創出に直結するという点で、他のサステナビリティに関する報告手法と一線を画すものであると言えます」。


このホワイトペーパーは、社会価値研究センターのウェブサイトから無料でダウンロードすることができます。また、国際学術フォーラム (IAFOR) の議長兼CEOであるジョセフ・ホールデン博士は、3月25日(金) 午後5時~午後6時 (日本時間) に、社会価値研究センター所長の須貝フィリップ教授とホワイトペーパーの内容について議論します。このイベントは、大阪大学に新設されたESGインテグレーション研究教育センターと共同で開催されます。このウェビナーへの参加は無料で、こちらからご予約いただけます。


社会価値研究センターについて

同志社大学は2021年11月に「社会価値研究センター」を正式に設立しました。この研究センターの目的は、(1)自らの組織、(2)株主、(3)顧客、(4)従業員、(5)取引先など関連企業、(6)地元地域社会、(7)地球環境といったステークホルダーに対する価値の創造や破壊の影響力の測定、監視、評価、報告する仕組みを研究・開発することです。


IAFOR研究センターについて

IRCは、大阪大学とIAFORの広範なネットワークを活用して、様々な国際的・学際的研究政策を育成するための研究センターを提供することを目的としています。


ESGインテグレーション研究教育センターについて

大阪大学大学院国際公共政策研究科 ESGインテグレーション研究教育センター(ESG-IREC)は、持続可能な未来の形成に向けた企業のビジネス活動における望ましい「ESGインテグレーション」モデルについて、理論と実践の両面から研究・教育・社会連携を推進する機関です。


JCNによるプレスリリースの原文はこちら

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